阿久根の観光ガイドブック「旅するわたし~阿久根とあなたをつなぐ本~」を作りました〜下園薩男商店で働く松出莉子さん

卒業生
2025.7.3

自己紹介

熊本県八代市出身。
2022年3月、法文学部人文学科多元地域文化コースを卒業後、株式会社下園薩男商店に入社し、阿久根市にあるイワシビルで勤務。
2025年4月、会社に発案した阿久根の観光ガイドブック「旅するわたし~阿久根とあなたをつなぐ本~」が販売開始。

下園薩男商店との出会い

学生時代の原動力は大学に入った意味を見つけることでした。興味があることにはできるだけ挑戦し、その中でも2年次に農学部のフィールドワークへ参加したことが会社を知るきっかけとなりました。南大隅町をフィールドに農家さんと農作業をしたり、民泊をさせてもらったりして、「地域」というものの面白さ、温かさに気づく経験をしました。さらに、地域の植物を使って商品開発を行う企業を知り、「眠っている地域資源を活かして、持続可能な社会につながる会社に入りたい」と思いました。振り返ると、覚えたての言葉を並べただけですが、当時の私は本気だったため、その後の就活イベントで初対面の先輩に思いを語り、紹介してもらえたのが、下園薩男商店でした。イワシの丸干しの製造を主とする会社で、法文学部の就職先としては挙がりにくいですが、私は職種よりも理念に共感しました。

「今あるコトに一手間加え、それを誇り楽しみ人生を豊かにする」

希望通りでなくても置かれた場所に意味を見つけて、自分なりの道をつくろうと過ごしてきた私にとって、考えが近い理念の会社で働けば、自分を見失うことはないと思い、紆余曲折ありましたが4年の秋に入社を決めました。

現在の仕事について

阿久根市にある下園薩男商店の直営店のイワシビルで働いています。イワシビルは1階ショップ・カフェ、2階工場、3階簡易宿泊所となっている3階建てのリノベーションビルです。イワシの加工品の販売、接客、卸先のお客様とのやり取り、カフェメニューであるたい焼きを焼くことからベッドメイキング、宿泊対応まで多岐にわたる業務を行っています。入社前のイメージは「憧れのキラキラしたお店」という漠然としたものでしたが、そのキラキラは毎日の地道な仕事により成り立っていることを実感しました。業務の種類が多いため、頭の切り替えや優先順位のつけ方が難しいですが、様々なスキルが身に付き、自分を成長させてくれる場所となっています。そのような中、1年目に社長に直接提案して始まったのが、阿久根のガイドブック制作でした。

『旅するわたし』の概要

下園薩男商店イワシビルが作成の阿久根オンリーの観光ガイドブック。The観光地ではないからこそ、暮らすように滞在でき、まちをシンカ(進化、深化)させる面白い人がたくさんいる阿久根。その魅力を伝えるべく、スタッフ自ら取材し、イワシにちなんだ104(イワシ)ページにわたって紹介しています。さらに、周辺のお散歩マップ付き。
人生観に着目したインタビュー記事からお店、お酒、アクティビティに至るまで阿久根の人の温かさと暮らしを感じてもらえるように思いを込めた読み物のようなガイドブックです。

『旅するわたし』ができるまで

きっかけは、宿泊のお客様にお食事処や観光案内をする中で、イワシビルオリジナルのまち歩きMAPを作りたいと思ったことでした。阿久根は観光地という要素が少なく、通りすぎるだけという人も多い場所ですが、じっくり歩いてみると実は自然、人、レトロな建物など魅力がたくさんあります。そのため、イワシビル目掛けて阿久根に来てくれる人がいるなら、阿久根のまちも一緒に楽しんでもらいたいと思い、まちを紹介するコンテンツの制作を思いつきました。
提案を聞いた社長は、以前阿久根のガイドブックを構想していたということもあり、紙の本の制作も視野に入れて賛同してくれました。その後、伴奏してくださった先輩、デザイナーさんと打ち合わせを重ね、旅の拠点としてお客様とこのまち、主に人をつなげるガイドブックを作ることが決まりました。その後はターゲットの設定、そのニーズを想像しながら、テーマやページ構成を考え、取材、執筆、編集、校正を経て、構想から約2年で完成しました。販売開始以降、本を読んで実際に阿久根を訪れてくださったお客様もいて、来た時よりも元気になって帰られる姿を見た時はこの本を作って本当に良かったと感じました。

在学生への一言

いろんなご縁で阿久根に来ることになりましたが、このまちはとても温かく、私を受け入れてくれてました。新卒1年目の社員の提案を聞き入れて、実現まで動いていただけた会社にも、感謝しかありません。他学部での経験がきっかけとなり、学生時代には想像もしなかったことが起きているような気がします。皆さんにも、自分の想像の範囲で行動を制限せず、少しでも興味があることには挑戦し、就職後もやってみたいことはどんどん提案してみてほしいと思います。
ここには書ききれなかった阿久根への想いも『旅するわたし』にすべて詰め込んでいるので、読んでもらえたらうれしいです。何かに悩んだり、行き詰ったりしたときはぜひ、阿久根のまちと人に会いに来てください。少しだけ楽になって前に進めるかもしれません。