韓国の釜慶大学へ留学中の志鹿綾莉さん
1.自己紹介
鹿児島県鹿児島市出身。2020年法文学部法経社会学科に入学。
2年次から地域社会コース農中ゼミに所属。2023年3月から韓国に留学中。
2.留学を希望した理由
留学を決意した一番の理由は、幼いころから海外に関心があり「人生で最も自由な時間のある大学生時代に留学したい!」という思いがあったからです。私は、生まれも育ちも鹿児島で、自分と違う環境で育った人と交流し、自分自身の価値観を広げられる留学に憧れがありました。当初は「英語圏へ留学をする方が将来役立つのではないか」という思いもあり、韓国留学を決めるまでに何度も悩みましたが、やはりかねてから好きだった韓国に留学することを大学二年生で決めました。中学校在学時に家族ではじめて韓国旅行へ行った際、日本とは異なる現地の食べ物や文化、生活習慣に実際に触れたことで韓国に対して関心を抱くようになりました。「韓国語で現地の方と直接会話をしてみたい!」と思い、高校在学時から韓国語の独学を始めました。鹿児島大学入学後の第二言語の履修で韓国語を学習し、基本的な文法や単語を学びましたが、会話力とリスニング力はまだまだ未熟であり、実際に韓国留学をすることで現地の生の声を聴きながら言語習得に力を注ぎたいと考えるようになりました。
そして、2022年秋、留学希望届を鹿児島大学に提出しました。韓国留学を決意してからは、留学希望先大学を決めることが難しかったです。鹿児島大学にある協定校の中から釜山への留学を決めた理由は、釜山への旅行経験があったことと韓国第二の都市である釜山の利便性の高さに惹かれたからです。釜山は韓国の中でも方言が強く、韓国人からも「釜山語」と呼ばれるほど独特の方言を持っています。釜山に留学することでいわゆる標準語と釜山の方言を同時に学べたら面白いのではないかと考え、釜山留学を決意しました。また、釜慶大学留学を選択したのは、釜慶大学が韓国政府から「外国人留学生誘致・管理優秀大学」として認定されていたからです。不安なことも多い人生初の留学で、政府認証があるということは一つの安心材料でした。
3.留学中の生活
2020年から流行した新型コロナウイルスの影響により、留学そのものが大学在学中にできるか不安になることもありましたが、2023年の3月から留学することができました。7月で留学から5か月が経ち、留学期間全体の折り返し地点に来ました。前期の活動を振り返ると留学ならではの経験を沢山することができ、とても有意義に過ごせたと感じます。現在は釜慶大学内の寮で生活しており、寮内にある食堂で日々食事が提供されるため、留学するにはとても恵まれた環境です。また、釜慶大学は釜山最大の繁華街、ソミョンという街まで地下鉄で12分という街中に位置し、大学から徒歩圏内には観光地としてにぎわう海水浴場もあります。
一年間という長いようで短い留学で韓国の有名観光地だけでなく、地方都市へも足を運びたいと考え、時間の取りやすい時期には積極的に旅をすることを意識しています。先日はテジョンという韓国の地方都市に行きました。テジョンは釜山から高速鉄道で一時間半のところに位置しており、韓国第五の都市です。釜山は日本人観光客が多いこともあり、日本語が通じるところも多くありますが、テジョンではあまり日本語が通じませんでした。実際に行った市場では、市販のものとは違った手作りキムチのおいしさに感動し、市場で現地の方と会話を出来たことは、とても楽しく良い経験にもなりました。テジョンは釜山より豊かな自然に囲まれたのどかな都市だったこともあって、少し違う韓国を知れた気がしました。今後もたくさんの都市に足を運び、地域ごとに異なる韓国特有の風土も味わっていきたいです。
大学の履修登録は自由にできました。私は、留学生対象の韓国語講義と韓国人の学生と一緒に学べる講義の2つを受講しました。最も印象的だったのは、「日本語と日本社会」という講義です。この講義は韓国人に向けて現代の日本社会について教えるという内容でした。韓国で日本社会について考えるということは、「日本社会を違う点から考え直すことができるのではないか」と考え、受講しました。日本人の受講生は私一人だったこともあり、他の受講生の前で日本社会の現状について発表することも多くありました。韓国人中心の講義のため内容は難しかったですが、新鮮でとても面白かったです。
現在、釜慶大学に在学している外国人留学生は1,000人を超えており、グローバルな大学で国を問わず友達をつくりやすい環境です。しかし、自分から動かなければ交友関係は広がらないため、韓国人の友達をつくることを目的に、留学直後から釜慶大学のサークルに入りました。最初は慣れずに苦労することもありましたが、同世代の韓国人の友達がたくさんできたのでとても良い経験になりました。留学当初はネイティブとの会話のスピードについていけず、心が折れそうになることが多くありました。自分の伝えたい思いをうまく言葉にできず、もどかしく思うこともありました。自分の韓国語力と周りの留学生の韓国語力を比較して不安になり、「このまま韓国語が上達しなかったらどうしよう。」と考えることもありましたが、分からない単語や表現を何度も聞き返しながら友達と会話をすることで少しずつ長く深い会話が出来るようになっていくのを実感することができました。韓国人の友達から「韓国語が上達したね!」と言ってもらえたことは私にとって大きな自信になり、勉強のモチベーションになりました。この頃から、周りと比較するよりも、自分を信じて韓国語力を上達させることが重要だと考え方を転換できたことで、本当に留学生活が楽しくなりました。
4.今後に向けて
前期は留学生活に慣れることが毎日だったような気がします。私は鹿児島大学で地域社会コースに所属し、社会教育学・生涯学習論を専攻しているので、残りの夏休み期間や後期は韓国の平生教育に関して調査を行い、現地に留学しているからこそ出来ることに挑戦してみたいと考えています。留学当初は前期から施設や実地調査をしたいと考えていましたが、なかなかうまく時間を使えず調査研究に取り組めませんでした。私は韓国の在住外国人のための教育・学習制度や貧困問題に対する施策・政策について関心があるため、これらを実施・展開する施設訪問を今後は行いたいと考えています。例えば、釜山には「釜山グローバルセンター」という釜山国際交流団が運営している外国人のための施設があります。そこでは、釜山在住の外国人のための韓国語講座や釜山市民と在住外国人の交流の場が定期的に設けられています。留学期間内に調査研究を行い、卒業研究では、韓国留学で学んだこと(調査予定内容も含む)と自身が現在大学で学んでいる社会教育・生涯学習の研究成果を踏まえ、卒業論文を執筆したいと考えています。前期の反省を活かしながら今後は平生教育研究・実践施設等に足を運んでいきたいです。
留学生活は新鮮で楽しいことが多い一方、大変なこともありました。一番は、留学が始まってから原因不明のアレルギーを発症したことです。いくつかの病院を回り、検査をしましたが原因はすぐにわかりませんでした。応急室で処置をしてもらった際は「日本に帰りたい」と思うほどつらかったです。正直、異国の病院は怖く、体中の蕁麻疹は治るのだろうかという不安に襲われました。空気も水も異なる環境に体が順応できていなかったために発症したのではないかと思いました。体調を崩したり、言語の壁を感じたりと留学してからつらいことも多くありましたが、留学したことを一度も後悔していません。そして、強く言えるのは、それほどの苦労があっても「留学をして本当によかった!」ということです。同じアジア圏の韓国への留学ですが、海外生活を通した国際感覚や自立することの重要性について身をもって学ぶことができました。さらに、日本に対するイメージが変わりました。実際に日本人以外の友達ができたことで、自分にとっての普通が違う角度から見れば普通でなかったことに気づくこともできました。例えば、日本の下水道設備の普及率がいかに高かったのかを知ることができました。韓国はトイレットペーパーをトイレに流せるところはまだ少なく、日本の方が下水道設備は十分に整っているという印象を持ちました。他方、韓国と比較して、日本はまだ十分にキャッシュレス化が進んでいません。現在の韓国では、現金を使う場面はほとんどなく、世界でもトップクラスのキャッシュレス化の進んだ国と呼ばれています。正直なところ、日本と韓国のどちらの国の方が良いかと問われた際は迷いがあります。留学を通して、韓国の魅力と私としてはあまり好きではない部分も見ることができたからです。旅行では、きらびやかで綺麗な部分だけを見ることが多いものですが、留学によって短期滞在では知ることのできない韓国を知ることができました。
留学をしたいと大学入学時から家族へ伝えていましたが、留学が決定し準備を始めると、想像していたよりも多くの費用がかかり、家族のサポートなしでは今回の留学をすることはきっとできませんでした。留学という貴重な経験は私自身の人生において大きな自信につながると確信しています。留学をしたことで日常生活の当たり前が当たり前でないこと、家族や周りのサポートのありがたさを再認識することができました。自分一人ではここにいま立っていることはないはずであり、感謝の気持ちを忘れず、残りの留学生活を日々大切に過ごしたいです。