大崎町で多文化共生調査を実施(11)

教員:
2021.7.5

6月25日(金)に大崎町の多文化共生基礎調査を実施しました。(酒井ゼミは公益財団法人マツダ財団から助成を受けて昨年度から「住民参加型による外国人技能実習生の地域包摂に関する調査研究~鹿児島県大崎町を事例に~」と題したプロジェクトに取り組んでいます。本調査は、特定非営利活動法人大崎ものづくりネットワーク振興会鹿児島大学大崎活性化センターからご協力頂いて実施しています。)

午前中は、大崎町社会教育課の宮本課長、東水流補佐、大野主査から、大崎町社会教育課の概要や多文化共生やSDGsに関連する取り組み等についてうかがいました。午後からは、大崎小学校運営協議会会長の萩原洋一氏から、大崎町立大崎小学校のコミュニティースークールの概要や課題、今後の展望についてうかがいました。

なお、インタビュー後には、社会教育課の東水流補佐から大崎町での方言に関する講座等についても説明があり、鹿児島方言について研究するブラジル人留学生は熱心に聞いていました。

学生Aの感想
午前中は社会教育課さんへお話を伺った。大崎町の課題として挙げられていた“人口減少”の中にも出生率の低下・人口流出・高齢者の増加などの細分化された(かつ複合的な)課題が含まれており、それを調査によって明確な課題へとする必要性を現場で感じることができたことは非常に良い学びになった。また、あらゆる面で社会教育課さんにとっての課題をより細分化して設定することで、実践に移しやすいのではないかと感じた。
子どもの社会教育活動が“自立”を目的としているため、大人とともに活動する機会を設けていない現状と同時に、“多世代間交流”を志向する様子がうかがえた。子どもたちの自立ももちろん重要ではあるが、多世代間交流によって自己形成が行われる可能性は大いにあり(高齢者にとっても生きがいになる)、社会教育課はそのような機会を担いやすい立場であると思う。大崎町ではリサイクルをとおして多世代の交流が行われていると考えていたが、意図的にそのような場を設けることでより地域内の動きは活発化すると感じた。また、現在講座を受講していない住民から講座への要望をいかに収集するかについても課題だと感じた。個人的には、学校へ意見書を配り、子どもやその親、祖父母の希望を聞くという手もあるのではないかと考えた。今後行われる予定の多文化共生についての取り組みや管理課さんとの連携にも注目していきたいと思った。(多文化共生については企業との連携が不可欠になると思うため、その点についても注目していきたい)

午後は、萩原さんにお話を伺った。特に印象に残った点が2つある。1つは、“やさしい”地域、ないしは“ゆるいつながり”についてである。お話を聞く中で、このやさしい地域、ゆるいつながりを形成するには現状を正確に把握し、住民や企業などに寄り添う姿勢が欠かせないと強く感じた。私自身地域問題を理想論で語ってしまうことが往々にしてあるが、萩原さんの地域課題に対する姿勢を知ることで地に足の着いた議論ができるように感じた(これは萩原さんと行政の方の連携が強い理由の1つではないかと思った)。前回の訪問でリサイクルの意義を理解できる講座を開いてはどうかと考えたが、住民の方の意見(「そのような講座に行くのは意識の高い人だけ」という意見)を萩原さんから聞き、より住民の方に寄り添った活動(意義付け)が必要だと感じた。多文化共生においても、“日常の交流がなければ本当の交流はできない”という言葉が印象に残った。企業側の意志(技能実習生が事故に遭わないこと・地域内でトラブルを起こさないこと)にも寄り添ったものであると感じた。畑はまさにゆるいつながりが生まれる場であると思い、実際に拝見したいと思った。
2つ目は、まずは実践という姿勢である。外国人には対話や行動でしか誠意を伝えることができないという考えには非常に共感し、忘れてはいけない姿勢であると感じた。また、CSの取り組みに関してもコロナ禍でできることを模索されており、60代以上の人材が活躍できる場を設ける活動にも注目したいと思った。
萩原さんのお話からは具体的な取り組みだけでなく、地域社会がどうあるべきか、人がつながるとはどういうことかという地域活動の基盤となる考えを聞くことができた。私たちも地域社会の根本を問うような意識をもちながらプロジェクトを行う必要があると感じた。

学生Bの感想
午前中では社会教育課さんへ話を伺った。話の中で特に印象に残ったのは、将来の担い手である若者への学習と大崎町自体の特徴についてであった。役場の方は大崎町に帰ってきて大崎町に貢献あるいは再び住んでもらうのを望んでいる場合と大崎町での学びを外部で発揮し広める人材でもあってほしいというような希望があった。その中で雇用や利便性ではなく、若者がどのようなものを求めているのかを再確認する必要があり、大崎町だけではなく町の外への研修や視察をし、外部から見た大崎町を経験してもらうような機会もあって良いのではないかと思えた。また大崎町には都会や都市の方にある施設がなかったりするが、それが大崎町に住むデメリットとならないような施策があれば良いと感じた。遠隔でも学べることや実践できることが増えてきているため、その特徴を活かして何か取り入れることができないか考えていきたい。
午後は住民へのインタビューと社会教育課さんと話をした。社会教育課さんとその時に話して気づかされたのが、大崎町に行くたびに私たちはお話を聞いて質問をするだけであり、私たちが大崎町の施策や考え方、やり方にどう思ったり考えたりしているのかを伝えることができていないと感じた。今は受動的で、情報の吸収をしているが、訪問のたびにこれはどうだろうかと思うことがあるため、逆に私たちが外から見た大崎町を伝えることができるのではないかと感じた。なぜ若者は都市へ行くのか、大崎町に住んでもらうにはどうしたら良いかというような直接的な問題への問いではなく、もっと分解していろんな側面から大崎町の人々と考えてみたい。そして社会教育課さんが、若者の意見が聞いてみたいとおっしゃっていたため、多くの情報を得た上で提案や共同で何かできないかと思う。

学生Cの感想
今回は主に多文化共生と環境のことについて伺った。現実的にこれらの活動に積極的な態度を示すのはごくわずかな人であり、ほとんどの人が「めんどくさい」という気持ちなどのネガティブな印象を持っているという点は、私たちがプロジェクトを進める上で留意しなければならない点であると感じた。また、実際にコミュニティスクールでのプロジェクトを考えていた時、私自身が小学生に何を教えられるか。という相手が小学生であるからと一方通行の学びを提供しようとしていたことは、個人的にとても反省することだった。私たちも小学生から学ぶことはたくさんあるため、双方向的に「学び合う」ことができるプロジェクトという前提をもう1度思い出したい。そして、このように小学生や中学生、後輩など、私自身がどちらかといえば「抑圧者」に分類される時、少しでも意識することを忘れてしまえば、常に小学生や中学生、後輩を「被抑圧者」にしたてあげてしまうことを改めて感じた。以後、気をつけたい。また、多文化共生について新たに感じたことは、多文化に触れれば触れるほど、多文化共生の難しさを感じる一方で、多文化共生社会を実現する意義を強く認識できるということである。「多文化共生は難しい。」で行動を止めてしまうのではなくて、だからこそ、その実現のために「自分たちに何ができるか。」というアクションにまで、経験を昇華させていきたい。