所在不明だった「琉球人行粧之図」の自筆本が発見されました
鹿児島大学附属図書館所蔵の上月行敬筆『琉球人行粧之図』『琉球人往来筋賑之図』は、嘉永3年(1850)冬の琉球人参府(江戸上り)の琉球人行列と江戸の町の賑わいの様子を記した絵巻です(長さ約15メートル)。しかしここには本来あるべき薩摩藩主の島津斉興、斉彬親子ら薩摩藩の武士が先導する冒頭部分の1巻(約5メートル)が欠落していました。
このたび、丹羽教授らによって長年所在の分からなかった欠落部分の所在が確認され、大学図書館を通しての購入に至りました。散逸した絵巻が再び完全な形で保管されるのは極めて幸運なことといえます。
これより先、丹羽教授はこの絵巻に記された地名を手掛かりに、描かれている武家屋敷が宇和島藩上屋敷であること、描いたのは薩摩藩士ではなく宇和島藩士の上月行敬であることも突き止めました。さらに丹羽教授は、上月行敬の孫の上月朝太郎が明治末年から大正にかけて鹿児島新聞の記者として鹿児島に住んでおり、彼が絵巻を鹿児島にもたらした可能性が高いことを指摘しています。
「上月行敬が描いた3巻の絵巻が鹿児島大学に揃ったことは大きな喜びです。上月が江戸詰のときにちょうど琉球使節の江戸上りがあり、それを故郷の宇和島の子どもたちに伝えたいという思いから筆を執ったといいます。その強い気持ちが絵巻やそれにまつわる人々を繋いでいるようにも思います。」(丹羽教授)
丹羽教授と神奈川大学日本常民文化研究所非文字資料研究センターの共同研究の成果(『日本近世生活絵引 琉球人行列と江戸編』2020)は同大学のホームページにアップされています。