考古学ゼミが鹿児島市照國神社境内の石塔群を調査

2022.11.2
照國神社拝殿

法文学部人文学科多元地域文化コースの考古学ゼミ(渡辺芳郎教授・石田智子准教授)は、「考古学実習1」の一環として、鹿児島市照国町にある照國神社境内の石塔群の調査を、2022年9月に実施しました。

照國神社は幕末の薩摩藩主・島津斉彬を祭神として祀った神社で、毎年7月に開かれる「六月燈」は数万人の参拝客が訪れる、鹿児島でも最大規模のお祭りとして有名です。その境内の西北隅に、「地神」や「水神」の祭神銘を刻んだ小型の石塔など89基が集められています。このような小型の石塔を庭の一角に祀っているお宅は、今でも見かけます。神社の方のお話では、先代の宮司の頃より、改築や転居、後継者不在などで祀れなくなった石塔を、要望を受けて断続的に引き取っていたそうです。そのためいつ、誰から、どこからこの地に移されたのかははっきりしません。

照國神社境内石塔群
調査カードの作成

鹿児島では古くから石造物の調査や研究が進んでいますが、残念ながらこれらのような小型の石塔に関する体系的な調査研究は、これまでありません。境内の石塔群の出所・由来は不明ですが、まとまった数の石塔を調べることで、石塔の種類や祀っている祭神の内容などを知るには貴重な資料となります。

調査では、一点一点の石塔の形態や大きさ、刻まれた銘文などを調査カードで記録する作業を行いました。この作業を通じて、どのような形態の石塔が多いか、祀られている祭神にはどのような種類があるか、などの基本情報を収集、整理することができました。また石塔の配置を記録するため平板測量を実施するとともに、近年急速に導入が進んでいる三次元計測による3Dモデルの作成も行いました。

平板測量
石塔の三次元計測(LiDAR)

参加したゼミの学生たちは、みずからの手で文化財を調査することで、文化財の具体的な姿、そしてそれを記録化することの重要性を肌身で知る機会を得たと思います。この経験が、地域に眠る文化財の発見、再認識、活用へとつながることを期待します。

調査の実施にあたってご協力いただいた皆さまに厚くお礼申し上げます。

なお調査成果の報告は『鹿大史学』70号(2023年3月オンライン刊行)に掲載予定です。

石塔群全体の三次元モデル(LiDAR)
調査参加者