奄美群島の起業家・職業人を支援する教育プログラムが始動中

小栗有子准教授が兼務を務める産学・地域共創センター生涯学習部門では、就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業(文部科学省)の採択を受けて、「奄美の『環境文化』を付加価値化する先駆的な人材育成プログラム」を9月から開始しています。現在、奄美群島全域より62名の社会人(平均年齢40歳)が、3つのコース(起業家コース、Webデザインコース、事業主・行政コース)で学んでおり、共通科目(50時間)の講義・実習がほぼ完了し、これから後半戦が始まります。

小栗准教授は、事業の企画と運営・管理、プログラム開発に携わっており、オンライン講義に加えて、奄美大島(10月9日~12日)、沖永良部島(10月23日~24日)、喜界島(11月6日~7日)、与論島(11月12日~13日)、徳之島(11月27日~28日)の奄美環境文化実習のコーディネーターと講師を務めました。

喜界島・サンゴ礁石垣の阿伝集落の散策(環境文化実習)
奄美大島・奄美市住用町市集落の「米つき踊り」体験(環境文化実習)

本プログラムには、法文学部の石田智子准教授と小林善仁准教授がそれぞれ共通科目の「暮らしと戦跡」と「奄美の自然と暮らし3(人文地理)」の講義を担当し、12月からは、馬場武講師が、起業家コースの専門科目である「事業化ワークショップ1と2」、井原慶一郎教授が、Webデザインコースの専門科目である「アートマネージメント論1と2」の講義を担当します。

本プログラムの詳細は、以下から確認頂けます。
【奄美教育プログラム】

環境文化実習のまとめのワークショップ
持続可能な地域戦略の講義(奄美大島会場とオンラインのハイブリッド型で開催)

ところで、群島内の5つの島を巡った「奄美環境文化実習」では、座学で学んだことを現地で確認し、地元の方との交流をとおして、奄美の「環境文化」を深く理解し、その価値を高め、これから地域資源として持続的に利活用していくためのマインドが形成されているようです。実習に参加した社会人学生のコメントを一部紹介します。

奄美大島と比べて、徳之島の風景の違いがとても印象的で、頭で考えていた以上であった。共通点としては、どこのシマ・市街地でも、一人一人の尊い人間がいて、その重なり合いで社会が成り立っていること。また、どこの社会にも歴史があり伝統があり誇りがあり先祖がいること、それらはいきなり構築・登場したのではなく、日々の積み重ねや繰り返す季節と営みの賜物であること。

私は今まで与論島はリゾート地いうイメージが強くありました。ですが実際は、古きを慮り神への信仰心であったり神と同様に人を思いやる個々の強さを持つ方が多く、かなりのギャップを感じました。沖永良部島とは同じ隆起サンゴ礁の島で島同士も近く、北山の統治下にあったことから同じ様な歴史なのかと思いきや、水や農地に恵まれず、やむなく島を離れ過酷な労働を強いられたりと辛い歴史があることを始めて知りました。また鹿児島を敵視していたりとヒストリーが全然違うことに驚きでした。
有形・無形の島の財産がある中からの発展だけでなく、無いからでも新しいものを生み出す力や知恵が与論島にはありました。それは今後の離島の課題としても共通することでもあり、新しい糸口にもなるのではと感じました。

暮らしているところは違えど、地域行事の継承や青年団・婦人会といった社会組織の維持に少なからず不安感を抱いているといった点は共通している。今回の実習に参加するまでは、そういった不安感を拭い去るためには、その要因となる少子高齢化や人口減少といった課題を解決しなければならないと思っていたが、必ずしも「少子高齢化・人口減少=マイナスイメージ」だけではないということを、今回の実習を通して感じることができた。極端な表現かもしれないが、例えば集落から子供がいなくなって高齢者だけになってしまったとしても、人口が1000人から100人に減ったとしても、そこに暮らしている人たちが「幸せ」だと感じることができる日常生活を送れているのであれば、少子高齢化や人口減少は「解決しなければならない課題」ではなく、それらの課題とどのように向き合っていくのかを模索し続けていくことが重要なのかもしれない。

「喜界島はサンゴの島である」ということを改めて感じました。喜界島出身者、在住者として参加した喜界島実習は当事者の意識からか考えることも多く、実習から数日経過した今でも考えることが多いです。特に事業者さんとの意見交換会では、普段業務で接することが多いため、その方々の言葉は、特に重く受け止めました。特にAさんのご自身の過去の経験から出た「島のためにという言葉をやめた」という言葉は行政で「島のため」を考えている私にとって印象的でした。様々なことにチャレンジする方を応援できる、見守ることが出来る島でありたいと考えました。