高校生にオンライン出前授業を実施
片桐教授は2021年10月12日(火)と10月22日(金)、熊本県立宇土高校と宮崎県立日向高校で、オンライン出前授業を行いました。両校の担当教員の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。
授業のテーマは両高校とも同じで「人口減少とどう向き合うか」。
講義時間を前半と後半に分けて話しました。
前半では「高校生として日本の人口減少にどう向き合うか」という問いについて、グローバルな視点で将来に向けて思索しました。
後半では「地方の小さな村は人口減少にどう向き合ってきたのか」という問いについて、限界集落と小中学校の統廃合の社会的事実に注目して、生徒たちと一緒に考えました。さらに「あなたは祖父母や両親から何を継承しますか」という問いも考えました。
双方向のやりとりをするため、生徒たちにも自分の意見を発表してもらいました。
この表に示したように、授業形式は両校で違っていました。
宇土高校では、生徒全員が端末機を使ってZoomに接続し、授業を受けました。Zoomのチャット欄には、生徒たちから自由な意見や質問が大量に書き込まれました。それらのコメントを全員で共有しました。対面授業ではこうはいきません。チャットのおかげで大変活発な交流ができました。
日向高校では、教室で一台のPCでZoom接続されたスクリーンを見ながら、生徒たちは授業を受けました。小グループに分かれて活発な話し合いがなされ、その結果をスクリーンに向かって発表しました。ちなみに、I部とII部は同じ内容でしたが受講する生徒が入れ替わったため、II部では、I部で録音された授業音声を再生することで授業を再現しました。同じ内容の資料と音声でしたが、I部とII部とで生徒の反応が多少異なっていたのが印象的でした。
後日送付されてきた生徒たちの感想文のなかには、つぎのようなものがありました(一部抜粋して紹介)。まずは宇土高校から。
宇土高校の生徒たちの感想文
人口減少は少子化によって起きていて、その少子化は個人の価値観が尊重される時代になったことの産物であるため、簡単に元に戻すことができないのだなと思った。・・・私たちの身のまわりにある問題は、思ったより他人事ではなくて、思ったより難しいことでもないんだなと感じた。
今回の講義で人口減少の背景などを知り、今後どういう対応が必要なのかまで考えることができました。僕の住んでいる地区も少子高齢化が進んでいて、行事もあまり盛り上がらなくなってきました。とても田舎で何もない所ですが、僕が生まれ育った場所としてこれからも残っていてほしい。
他の生徒の意見も交換しながら進めることでたくさんのことを吸収する良い機会でした。楽しかったです。
自分が今住んでいる地域は若い人がほとんどいなくて村の中で人と会っても高齢者がほとんどです。また亡くなる人も最近増えています。祖父と祖母だけでなく村の人から孫みたいな感じで今まで接してもらいました。村の中にあるお宮とか村のものの掃除とかして、少しでも長い間、村と関わったいろんな人に感謝していきたい。
私は子どもを産みたいと思っていて、仕事などが中心で子どもを産む必要はないと思っている人の分まで、産みたい人が産めばいいと思った。それを実現するために政府の助けも必要だ。
つぎに日向高校の生徒たちの感想文(一部抜粋)はこちら。
日向高校の生徒たちの感想文
人口減少とどう向き合うかという難しそうなテーマだなと思っていましたが、これまで真剣に考えることがなかったなと感じさせられた講座になりました。両親から継承するものを考えたときにパッと思いつかないのも原因だと思うので、地域や身のまわりの特徴を見つけて、それに価値を生み出すことをやっていきたい。
多様な価値観が認められてきたからこそ、結果として少子化に繋がってしまったことがわかった。
日本の人口減少について大まかなことは知っていたけど、日本の総人口の長期的推移について実際にグラフなどの数値を見てみると、2004年からの人口の激減にびっくりしました。日本では価値観が多様になり、色々な意見が尊重され、選択肢が増えた今、子どもを産まない人が少しずつ増えてきた一方、世界では人口増加が問題になっていて、もし日本の人口が増えたら世界の人口もまた増えていくので、とても難しい問題だなと思いました。グローバル化が進んでいる日本の私たちに必要な力となる英語の能力を身につけたり、付加価値を生み出したりしていきたい。
私が両親から継承したいものは、平等に判断する心です。私の父は特別支援学校で教師をしていて、誰にでもいつもと変わらぬ態度で接しているので、私もそんな大人になりたい。
人口減少の本質を知り、限界集落になるのを防ぐために、自分が地元で大切に思うものをうまく継承していきたいです。そのためにただ漠然と地域の文化を大切に思うだけでなく、商業や付加価値のあるものづくりに紐づけていきたい。