令和3年度法文学部新入生の皆さまへ

令和3年4月2日
法文学部長 松田忠大

 新入生の皆さん、鹿児島大学法文学部へのご入学おめでとうございます。法文学部の教職員を代表してお祝いを申し上げるとともに心より歓迎します。

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、大学の教育研究活動にも大きな影響を与えています。今年度も、皆さんが心待ちにしていた入学式は規模が縮小され、学部の代表者以外はこれに参加することができないことをたいへん心苦しく思います。
 昨年度(令和2年度)は、大学内での感染拡大の防止を図るため、法文学部が開講するほぼすべての授業を遠隔方式で実施しました。そのため、昨年度の新入生は、10月および12月に実施されたスクーリング(登校)期間を除き、鹿児島大学のキャンパスや法文学部の教室で、教員や他の学生と対面での授業を受講することができませんでした。
 残念ながら、現段階では、わが国および鹿児島県内における新型コロナウイルスの感染状況は、未だ収束には向かっていません。そのため、法文学部では、大学が定めた教室収容基準を満たせない大人数の講義については、昨年度と同様に、遠隔方式の授業とせざるをえません。他方、主たる履修者が1年生の講義、少人数の演習および実習等については、可能な限り教室等における対面方式での授業を行うこととしました。これにより、法文学部で開講する授業のおよそ7割が対面方式で行われることになります。対面方式の授業を行うにあたり、教室内の消毒作業、アクリル板の配置、換気用網戸の設置等、万全の感染予防対策をとって皆さんをお迎えしますので、どうぞ安心して登校してください。また、対面方式の授業と遠隔方式の授業の混在、健康上の問題などの理由で、授業への出席について不安なことがあれば、遠慮なく担任教員や授業担当教員または法文学部学生係に相談をしてください。

 さて、皆さんは、これから大学生としての第一歩を踏み出します。高等学校では、大学受験に向けて、教育課程に沿って定められた科目を履修してきたことと思います。大学では、すべての学生が同じ科目を学ぶわけではありません。学部や学科、コースごとの卒業要件にしたがって学生自らが履修科目を決めて学習します。言い換えると、法文学部では、各コースが定めた「卒業資格修得のための履修基準」を満たしていれば、自分が興味、関心をもった科目を、自由に好きなだけ学ぶことができます。皆さんはいわば、これから、皆さん自身が定めた4年後の到達点である「学びの最終目的地」に向かって、自ら選んだ船に乗り、自ら舵を取って「航海」を始めることになるのです。この「航海」の途中では、様々な知識や能力を身につけるために、多くの港に寄港しなければならないでしょう。また、時には、嵐に見舞われるかもしれません。しかし、皆さんは、自分の力でそれを乗り越えなければなりません。教職員は、皆さんの「航海」の水先案内人となって、必要な時には、皆さんへの助言や支援を行いますが、あくまでも目的地に向かって「航海」を続けるのは皆さん自身なのです。
 また、大学での「学びの航海」では、ただ、授業に出席するだけでは不十分です。大学設置基準は、1単位の授業を45時間の学習を必要とする内容をもって構成することを標準とする一方で、各大学が、教育効果などを考慮して、講義・演習の場合の授業時間を15時間から30時間の範囲で設定できるとしています。この規定に基づき、法文学部では、「講義については15時間の授業をもって1単位」としています(鹿児島大学法文学部規則11条)。1単位につき講義時間は15時間しかありませんので、不足する30時間は予習および復習を含む自学自習に委ねられているのです。教員が教授できるのは基本的事項に限られます。したがって、1単位の授業内容を十分に理解するためには、講義時間のさらに2倍の時間をかけて自主的に学習する必要があるのです。鹿児島大学および法文学部には、図書館、資料室、パソコン室をはじめ、皆さんの自主的な学びをサポートするために必要な充実した施設・設備が整備されています。これらを自らの学びに大いに活用してください。

 大学での4年間に、皆さんが行う「航海」は、「社会」という新たな海原での「航海」に備えた訓練的性格をもっているとも言えます。現代社会では、短期間のうちにその構造や価値観が大きく変わります。皆さんは、専門の学問を学びながら、社会情勢の変化にも目を向け、何を身につけるべきかを絶えず考えなければなりません。しかし、(1)文系・理系を問わず、できるだけ幅広い分野の学問に触れて正義の感覚や自らの価値観を持つこと、(2)多様な価値観の存在を踏まえて社会の諸課題への自分なりの考え(答え)を持つこと、(3)自分の考えを他者に論理的に伝え、他者とディスカッションができること、(4)他者と適切なコミュニケーションがとれることといった事項は、いかに社会が変化しようとも、必ず求められることであり、現代社会における自己実現のためにも不可欠のものであると思います。法文学部では、これらのことを身につけてもらえるよう、様々なカリキュラム上の工夫を行っていますが、正課の授業にとどまらず、学生の自主的な研究会・サークル活動、ボランティア活動などを通じて学外の世界にも学びの場を求めてほしいと願っています。
 また、いうまでもなく、現代では国際化が進展しています。世界の人々がお互いを尊重して支え合い、平和で豊かな国際社会を築くには、まずは、異文化を理解することから始めなければなりません。法文学部では、海外研修を通して異文化理解を深めることができる科目も配置しています。4年間のうち1度は、「国内航路」だけではなく「国際航路」にも舵を切って、外国の文化に触れ、人々との交流を行うことにより、異文化への理解を深めてほしいと思います。

 法文学部に入学された皆さんのこれから始まる「航海」の成功を祈りつつ、皆さんの歓迎のあいさつといたします。入学おめでとうございます。