カナダに留学中の加藤大貴さん

在校生
2022.7.13

自己紹介

熊本県熊本市出身。2019年法文学部法経社会学科に入学。
2年次から地域社会コース酒井ゼミに所属。
3年次終了後、大学を1年間休学し、現在はカナダに留学中。

学内で学んだこと

様々な講義を受講していく中で自分自身に起きた変化をあげるならば、それは良い意味で「自分自身の目をまずは信じるようになったこと」です。これは、いわゆる「あたりまえ」であると考えられていることや「世間体」として語られる事柄について、疑う姿勢を身につけることができたということです。例えば近年、「人種差別」という言葉を耳にする機会が増えてきました。では、一体「人種差別」の何が問題なのでしょうか。この問題を考える上でこれまでの私が行っていたことはただ1つ。それは、インターネットで「人種差別・問題」という言葉を検索し、その中でも上位にでてくる人の目を引きやすく加工された悲惨な情報や事件に一瞬だけ心を揺り動かされ、すべてを理解した気になることでした。しかし、どうでしょう。インターネット上で見たその記事や情報は誰が何のために書いているのでしょうか。また、その問題はなぜ起きてしまったのでしょうか。情報化社会の中に生きる私たちは、1分もあれば幾つもの情報にアクセスでき、またそれらの多くは全てが真であるかのようにスッと心に届いてくるようなものばかりです。これらをかみ砕きながら、理解しようとすることは決して悪いことではありません。しかし、もし今の私が「人種差別」の何が問題かを突き止めるならば、まずは少し極端ですが「人種差別」=問題ということを疑うことから始めます。それは、私自身が「人種差別」というものを事実として経験したことがないからです。またこれは、私の中で「人種差別」が問題とすら呼ぶことができない漠然とした理解でとどまっていることも表しています。逆に、自分自身が何かしらの「人種差別」を経験して、もしくは自分の目の前で「人種差別」を経験した誰かから直接語られる生の声を聞いて初めて、「人種差別」という問題に直面し、理解がより立体的になるように感じます。つまり、私は1分間の中で得られ3日で忘れるたくさんの情報よりも長期間の中で得られ、心にずっと残り続けるたった1つの真実がより大切であると考えるようになりました。このような姿勢を身につけることで、この人は〇〇人だから~~。といったように国籍で人を判断することなどはあまり無くなり、より目の前の1人、そして目の前の出来事に「バイアス」や「固定観念」といったフィルターなしに向き合うことができ、結果として今まで見えていなかった新たな視点や事実に対し、より寛容になれた気がしています。

学外での活動

私は以前、デパートでアルバイトをしていたのですが、ほぼ毎日のようにゴミ捨て場に売れ残った食品が捨てられていることに気づき、違和感を覚えるようになりました。これがきっかけとなり食品ロスに興味を抱くようになり、「NPO法人フードバンクかごしま学生チーム」に加入しました。私の所属する学生チームは企業や工場から(食べられるにもかかわらず)何らかの理由で廃棄されてしまう食べ物を預かり、災害時の避難食として活用する、または福祉施設や子ども食堂に届けるなどのフードバンクとしての活動を始め、代表理事の「自分たちでやりたいことを考え自ら動く」という方針の下で、基本的にはメンバー間でどのような活動が求められているのかについて話し合い、活動内容を決定していきます。そのため、活動の自由度は他の組織に比べ非常に高いです。先日は、九州日本人学校に通う留学生と交流会を行いました。留学生の多くは、コロナ禍の留学ということもあり日本人学生とつながる機会がほとんどない現状があり、せっかく夢や覚悟を持ち、日本に来てくれた同世代のみんなに私たちが何かできることはないだろうか、そんな思いから計画したものでした。交流会を終えて、「留学生」としてではなく、1人の「友達」としてみんなと関係を築くことができたことが素直にうれしくてうれしくて、むしろコロナウイルスに感謝するほどでした。(笑)また、そんなみんなから「今日はありがとう」と言われたとき、少し違和感を抱いたのは、自分たちが留学生以上に楽しむことができていたからに違いありません。必ず定期会にしますので、時間がある方はぜひ参加お待ちしております!

ゼミでの活動

私の所属する酒井ゼミの特徴はなんといってもグループワークの多さです。これを聞いて、「多くの人が面倒くさそう。」と思うかもしれません(笑)。自分とは異なる価値観を持つ人と意見を共有し、場合によってはみなで同じ方向、同じ結論に向かっていかなければなりません。確かにこれは簡単なことではなく、体力的にも精神的にも疲れることでしょう。しかし、酒井ゼミのグループワークでは個人的に2つの暗黙のルールによって、より建設的にそしてリラックスした環境でグループワークを行うことが可能になっているように思います。1つ目は「わかりません。」という答えが常に存在しているということです。一見「わからない。」と答えると考えていないような、またグループワークに参加していないような印象を与えてしまうのではと考える人も多いと思います。しかし、「分からない。」ものはどう考えても、「分からない。」ものです。「分からない。」からこそみんなで考える意義があります。誰かから発された「分からない。」によって全体の思考が深まっていくことが多々です。「分からない。」という意見なしに「分かった。」もありません。ただ、「分からない。」が逃げになってはいけません。それは、どこが分からないのか「分からない。」が一番の問題だからです。これは、何もグループワークだけではないと思います。バイト先や就職先でも、「分からない。」ことを「~~が分からないから教えてください。」と素直に伝え、正しいやり方を教えてもらうことが成長する近道であるように思います。逆に集団としては、「分からない。」を気軽にいえるような空気感をいかに作りだしていけるのか。これがグループで動いていく上で必要不可欠なことであるように感じます。つまり、ゼミ内では自然と「個人の問題を個人だけの問題とは捉えずに、グループの問題として捉え解決策を模索していく。」といった共通認識がなされているからこそ「分からない。」という選択肢が常に存在しているのです。そして2つ目のルールは、グループワークのルールとしてよく耳にしますが、相手を「絶対に否定しない。」ということです。しかし、私の中では「相手を否定しないように意識している。」というより「相手の意見を受け容れるためのスペースが常にある。」といった理解が近いかもしれません。何をもってあなたは相手の意見を否定できるのでしょうか。あなたの意見が絶対的に正しいのでしょうか。あたりまえのことですが、私たちの思考は、これまで読んできた本や見てきた映画、そして家族や友人など、これまでの経験や関わってきた人に大きな影響を受けています。同じ1つの出来事に対しても、何を感じ・何を思うのかは人それぞれです。この視点に立つと、人と対話を重ねるほどに、自分には無かった視点ややり方を吸収していくことができます。実際にグループワークにおいて、自分の思考が無意識のうちに何かに縛られていて、知らず知らずのうちに限られた選択肢の中から答えを見つけようとしていたと気づかされることが多々ありました。またこのルールは、生徒の意見を常に受け容れてくださる先生、そして同様に後輩の意見を常に受け入れてくださる先輩方の姿勢、さらにその瞬間に感じた疑問や意見を素直にぶつける生徒、後輩の存在によって自然と受け継がれ、これこそがアットホームで常に前向きなゼミの空間を形成しているように感じます。先生、そして先輩のみなさま、ありがとうございます。同級生、そして後輩のみんな、いつもありがとう。

カナダで実現したいこと、学びたいこと

半年という限られた期間の中で、いかに多くの挑戦と失敗ができるかが勝負だと思っています。常にあとちょっとの勇気を振り絞るというか(笑)。その少しずつの頑張りが私の留学生活に大きな違いをもたらすものになると思うからです。
具体的な目標としては、語学力の向上、そしてどんな時もポジションで前向きの矢印を持った人間になりたいと思っています。留学ではトラブルや思い通りにいかないことに多く出くわすと思います。そんな時でも、それすらも楽しみながら、常に前を向いてエネルギッシュでありたいです。まだ、カナダでの生活はわずかな私ですが、何かやりたいことがあればとりあえず口に出して、動いてみることの大切さを感じています。理由や目的はあるに越したことはないですが、ないからと言ってその選択を阻むものにはなりません。計画書を綿密に書き上げる時間も大切ですが、それ以上にとりあえず一歩踏み出してみる。失敗が許される大学生だからこそ、この姿勢を忘れずに挑戦を繰り返します!